第09回 カバーメイク(5)

第9回 カバーメイク(5)
目次:カバーメイク

1 カバーメイクとは
2 歴史(「カバーマーク」誕生から日本導入まで)
3 カバーメイクの功罪
4 カバーメイクの目的
5 今、日本では(日本の現状)

※1および2はメルマガ83号に掲載しています。
※3はメルマガ84号(前半)、86号(後半)に掲載しています。
※4はメルマガ89号に掲載しています。
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今回でカバーメイクについては、ひとまず終了です。

カバーメイクのメリット・デメリットや現状などを考察することで、カバーメ
イクの発展に少しでも寄与できれば幸甚です。
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5 今、日本では(日本の現状)
(1)全国へ普及

1928年、アメリカの赤アザのある女性リディア・オリリー氏によりカバー用
ファンデーション「カバーマーク」は発明されました。それがカバーメイクの始
まりです。その後、1960年、ジャパンオリリーが設立され、「カバーマーク」が
日本でも製造販売されるようになりました。(詳細は、メルマガ83号参照)

ジャパンオリリー社は、日本各地でカバーメイクのデモンストレーションを行
い、積極的に普及活動を繰り広げました。デモンストレーションは反響を呼び、
カバーメイクは日本全国に普及していきました。(※1)

また、ここ10年くらいの間には、既存の化粧品メーカーもカバーメイク専用の
ファンデーションの開発や販売に力を入れ始め、カバーメイク専門のサービスも
出現しました。現在、日本では、およそ10社(団体)がカバーメイク専用の化粧
品を販売したり、カバーメイクのサービスを行ったりしています。(※2)
(2)課題

カバーメイクを扱う企業や団体が次々と出現し、商品の種類も増えるというこ
とは、利用する側にとって喜ばしいことです。
しかし、その一方で新しい問題も発生しました。
●最適な使用方法とは

カバーメイク専用のファンデーションは、文字通り“カバー力”が決め手です。
カバー力を高めるため、各メーカーは独自に研究を重ね、オリジナル商品の開発
・販売をすすめてきました。その結果、使用方法(ファンデーションのぬり方)
も各メーカーごとに特徴があり、「この商品はこういうぬり方で」といった各々
の商品の適正なぬり方をしなければなりません。

決められた方法ではないぬり方をしていると、どんなにカバー力のあるファン
デーションを使ったとしても満足のいく仕上がりにはなりません。それは、その
商品の評価を下げるだけではなく、「カバーメイク」そのものの評価を下げてし
まう恐れがあります。「カバーメイクなんて全く効果が期待できない。大してカ
バーできない」といった誤った評価をしてしまうかもしれないからです。(※3)

●商品の比較

企業は自社商品と他社商品とが簡単に比較できてしまうことを嫌い、なかなか
情報をオープンにしない傾向があります。化粧品メーカーも例外ではありません。
たしかに、各社それぞれのサイトではある程度情報を公開していますが、表現
方法や写真が統一されていないため、単純には比較検討できません。

今のところ、他社と連携をとるような傾向はほとんど見られず、各社の商品を
比較できるようなシステムもありません。(※4)

そのため、当事者自身が各社・各団体を実際に訪れて体験し、自分に一番あっ
た化粧品・使用方法を探し当てるしかないのが現状です。私自身、使い勝手を確
認してみたくて、化粧品(ファンデーション)を片っ端から買いそろえたことが
あります。

●メイク技術者の養成

カバーメイクをしてみたいという希望者が増え、メイク技術者の養成が急務と
なりました。

しかし、商品によってそれぞれ使用方法が異なるため、統一的な技術指導を構
築することができず、各社・各団体は独自のプログラムで技術者を養成せざるを
えません。カバーメイク技術のレベルをどの程度まで求めるのか、通常のメイク
との兼ね合いはどうするのかなど、目安となる基準も各社・各団体まかせなのが
現状であり、サービスを受ける側にとってどこを選べばいいのか判断材料が明確
ではないという問題があります。

また、当事者が自分自身にメイクをするのとは違い、メイク技術者はアザ、ヤ
ケド、キズといった様々な症状に対応できなくてはなりません。そのためには、
技術者の養成段階でできるだけ多くの当事者に施術し、多様な技術を身につける
必要があります。ところが、当事者のモデルは少なく、養成訓練期間中に実際に
当事者にメイクできる機会はほとんどありません。

これは、そもそも当事者の人数が少ないためモデルの数も少ないというような
単純な問題ではありません。「素顔を他人にさらさなくてはならない」「自分は
やはり普通とは違うのだと再認識させられる」といった当事者のストレスに対す
る理解やフォローが足りないため、モデルを引き受けることを躊躇(ちゅうちょ)
してしまう当事者が少なくないのです。

さらに、メイク技術者には、技術面だけではなく、アピアランス問題(「見た
目」の問題)に対する姿勢も問われます。
アピアランス問題への認識が低かったり、表面的な理解しかしていないため、
励ますつもりでの発言や態度がかえって当事者を傷つけてしまったり、当事者の
要求とは異なったメイクをしてしまうなどの問題が、実際の現場では起こってい
ます。

このような様々なハードルがあり、当事者が満足できるプロの技術者がなかな
か育ちません。その結果、メイクサービスや技術指導を行えるサロンが一部地域
(主に大都市圏)に限られています。

●カバーメイクは魔法じゃない

カバーメイクの普及にともない、関連書籍も多数出版されました。テレビや雑
誌でも取り上げられるようになり、ネット検索でも簡単に情報収集ができます。
Googleで「カバーメイク」を検索すると25,000件もヒットします。
しかし、過剰・過大な報道がなされたり、あたかも取材記事であるかのような
体裁をとっている広告や、体験者の好意的な声ばかりが掲載される嫌いがありま
す。
そのため、効果だけが一人歩きして、カバーメイクがまるで魔法であるかのよ
うな誤解が生じています。

カバーメイクは、あくまでも“メイク”です。限界があります。凹凸はカバー
できませんし、ふくらみやキズあとの盛り上がりは消すことはできません。色も
ある程度はカバーできますが、ケース・バイ・ケース。濃さ、大きさによっては、
カバーしきれない場合もあります。
そして何より「メイクをしている」という事実は隠せません。ファンデーショ
ンをぬっている肌は素肌とは違います。極少量のファンデーションを薄くぬって
いるだけであれば、一見しただけではファンデーションをぬっていることがわか
らないようにすることもできますが、その場合は「アザの色がワントーン落ちつ
いて見える」、あるいは「非常に薄いアザがカバーできる」程度です。
また、ファンデーション全般に言えることですが、商品によってその程度は違
えど水や汗には弱く、化粧くずれもします。

●カバーメイクを見極めるには

つまるところ、その化粧品にあった使用法で、きちんとした技術を習得しなけ
れば、けっして満足のいくカバーメイクにはなりません。じっくりと各メーカー
を比較検討し、自分にあったカバーメイクを選ぶことが最適ではないかと思いま
す・・・が、そんなことが簡単にできるのなら苦労はない。というか、比較検討
できるようなシステムがないんだから、まず無理です。
もし、時間とお金が有り余っていて、尚かつ、研究者的好奇心が旺盛な方がい
らっしゃいましたら、どんどん比較しちゃって下さい。そして、その結果をこっ
そり私に教えてください(笑)

では、そうではない人はどうすればいいのか。

まず、カバーメイクを正しく理解すること。カバーメイクがどういうものなの
か正しく理解していないと、期待ばかりが先走り、結局はどのメーカーのカバー
メイクでも満足できないでしょう。
詳細な知識はいりません。カバーメイクにはできないこと(カバーメイクの限
界)を理解していればOKです。

第2に、どういう顔にしたいのかをしっかりイメージしておくこと。とはいえ
100%想像どおりにはいかないので、どの程度まででよしとするのかあらかじめ
決めておいて下さい。

第3に、費用の上限を決めておくこと。事前にしっかりとリサーチができてい
れば心配ないのですが、万一、いきなり高額な商品やサービスをすすめられても、
「○○円以上は絶対に払わない」と決め、セールス交渉に根負けしないことです。
断固とした態度をとると、案外あっさりと引き下がるもんです。

そして、余裕をもつこと。これが一番重要です。カバーメイクで死ぬことはあ
りませんから、「まぁ、だまされたと思ってやってみるか」っていうくらい余裕
を持って臨めば、むしろ思った以上の収穫があるはずです。

(3)おすすめのメイクサービス

最後に、私が信頼する団体を2つご紹介します。これまでの活動の中で直接会
い、メイク現場を拝見したり、実際に教えていただいたりしてきた経験からおす
すめする団体です。
なお、その他の企業・団体に問題があるというわけではありません。あくまで
も、私自身の実体験に基づいてのご紹介ですので、あしからずご了解下さいね。
●アピアランスリハビリセンター(ARC)
http://www.arc-apia.co.jp/

ARCでは、カバーメイクだけではなく、若返りメイク、更年期のメイク、高
齢者のメイク、思春期のメイク、就職メイクなど様々なメイクを行っています。
クライアント本人と相談しながら(場合によっては医師を交えての面談をも行い)、
本人の意向を最大限に生かしつつ、一番適切なメイクを施術します。
ひとりひとり、丁寧に対応してくれます。オリジナル商品も扱っていますが、
クライアントが普段使っている化粧品を基本ベースに考えてくれますので、商品
の購入を無理強いすることは絶対にありません。もしもそんな目にあった方がい
たら、今すぐ教えて下さい。
あえて難点をあげるとしたら、のんびりしているところでしょうか。せっかち
な人、「時は金なり」な人には不向きかもしれません。でも、この程度のゆとり
は必要かと・・・。

●NPO法人 メディカルメイクアップ アソシエーション(MMA)
http://www.medical-makeup.net/

MMAは、メディカルメイクアップ(カバーメイク)を普及させ、当事者のみ
なさんが《心の安らぎと自信を持って、健康で明るい生活を送れるよう支援する
こと》を目的としています。
MMAでは、独自のプログラムによるサポーター(メイクボランティア)の養
成に力を入れています。
実は、私、2005年度のサポーター養成講座を修了しているのですが、なんとサ
ポーター認定試験には落ちてしまいました(>_<)
その経験からいっても、認定試験に合格されたサポーターのレベルは、かなり
高いのではないか・・・と思います。

なお、この2団体のメイクサービスは有料です(料金・時間等はHPで確認し
て下さい)。非常に良心的な価格なので、「試してみる価値あり!」です。
ついでに、無料のサービスを行っている企業も紹介しておきますね。

●グラファ ラボラトリーズ株式会社
http://www.grafa.jp/

●資生堂 ライフクオリティービューティーセンター(旧ソーシャルビューティーケアセンター)
https://corp.shiseido.com/slqm/jp/salon/

どちらのメイクサービスも無料です。
私が直接体験したわけではないので、サービス内容・質についてはよくわかり
ませんが、あくまでも「化粧品メーカーのサービス」です。おそらく自社製品し
か使わないでしょうし、いいところ(だけ)をアピールしてくると思います。た
だ、どちらもきちんとした企業なので、あまり心配はいらないでしょう。
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以上、5回にわたりカバーメイクについて書き連ねてきました。ひとまずこれ
でカバーメイクについては終わりますが、引き続き探究しつづけていく所存です。
今後の成果につきましては、また後日。

最後となりましたが、カバーメイクは絶対に必要なものでも、絶対に不必要な
ものでもないことを、どうぞお忘れなく!
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※1 このデモンストレーションは、実際に顔にアザやヤケドなどの症状がある
女性をモデルとして、目の前でカバーメイクを披露するというものです。また、
メイクをするアーティストの多くも当事者の女性が務めていました。
※2 一般の化粧品メーカーがカバーメイク専用の化粧品を開発・販売している
所もあるし、既存の専用化粧品を使ってカバーメイクのサービスを行っている団
体もあります。それらは企業、NPO法人、任意団体と、様々です。
※3 最近では通販で購入することも可能なので、正しい使用方法を習わずに商
品だけを購入する人も多く、うまくメイクできずにあきらめてしまうケースも少
なくありません。また、商品と使用方法とを取り違えてしまっている(実際はA
商品を使っているのに、B商品のぬり方をしてしまっている)ことに気づかず、
うまくメイクできずに困っているという話も聞きます。
※4 個人が比較検討をした結果をWebサイトやブログやmixiのコミュに書いて
いるものはありますが、これらはあくまでも「個人の体験」によるもの。是非と
も、行政や業界ベースで情報収集・公開を行って欲しいと思います。

★主な参考文献★

『メディカルメイクのすべて』
(NPO法人メディカルメイクアップアソシエーション・編)
※『メディカルメイクのすべて』は、NPO法人メディカルメイクアップアソシ
エーションで販売しています。(Amazon.co.jpでは扱っていません。)
詳しくはこちら http://www.medical-makeup.net/news/19.html

『見つめられる顔 ユニークフェイスの体験』(絶版)

『フレグランス・ジャーナル 2006年2月号』

『出会い、そして奇跡 愛の灯を点して25年』(仲川幸子・著)(絶版)
☆その他の参考資料☆
グラファ ラボラトリーズ株式会社 http://www.grafa.jp/
アピアランスリハビリセンター http://www.arc-apia.co.jp/
メディカルメイクアップアソシエーション http://www.medical-makeup.net/
ほか

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