Vol.06 イメージとの闘い -後編-

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イメージとの闘い -後編- ( 『さらば青春の光』 について)

この映画が今でもインパクトを保ちえているのは、前編に書いた、演出の上手
さとジミー役のフィル・ダニエルズの演技力によるものだと思う。ダニエルズは、
神経質で情緒不安定で、ささいなことにも神経が揺れ動く過敏な若者を上手く演
じていて、ルックスもマッチしている。ただし、私は10代の頃見たからね。30も
半ばの今、初めて見たら「バカなガキの映画」になっちゃう気がする。まあ、そ
んなことはいい。
この映画も、「人を理解する」ことの難しさを描いてるんですね。ジミーは好
きなコの事も、エース(スティング)の事も<こうだろう、こうあってくれ>と
勝手に思いつめ、勝手に裏切られていく。大人であれば、もっと客観的に、冷静
に見わたせるところが、幼いがゆえに一直線に思いつめ、なかば自分で事を大き
くしてしまって、絶望してしまう。
で、昔、『このビデオを見ろ!』というムックが宝島から出てて、この映画を
漫画家のいしかわじゅん氏が紹介してるんだけど、

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◆ 以下ネタバレ ◆
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いしかわさんは、最後、ジミーがスクーターと共に崖から飛び降りた、つまり
自殺した、と思ったみたいで、「非常なショックを受けた」という意味合いのこ
とを書かれてた。私も最初、ジミーは自殺したものと思い込んでた。それをこの
映画を勧めた友達に話した。そうしたら友達が、「それは違う。ジミーは死んで
ない。もう一回見てみな」とか言うんだ。それでまた見た。「なるほど」って思っ
た。二度、三度と見るとわかるけど、冒頭のシーンがラストのシーンからつながっ
てるんだ、この映画。

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◆ ネタバレ終わり ◆
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だから、邦題の『さらば青春の光』はベタだけど内容には合ってる。ジミーは、
エース(スティング)のスクーターをぶっ壊して、ガキだった自分と決別するん
だ。

いしかわじゅん氏は、マンガ家でマンガの評論もし、コラムも書き、著書を読
めばわかるけど相当な読み手である。映画だって私なんかより(おそらくは私の
友達よりも)ずっと観ていると思う。そんな人でも当然「読み違い(見間違い、
か?)」はある。
何が言いたいかといえば、誰だって誰かのことを誤解するし、自分もまた誤解
し、誤解される。そこを前提にしてどうやっていくか。

言い方を変えれば、まさにこの映画のテーマでもある「<変わっていく他人、
変わっていく自分、変わっていかざるえない自分>にどう対処するか」という事
なわけで。だから、このあとジミーはどうなっていくのか、ちょっと見てみたい
気もする。

(了)

→Vol.07 ビートたけし論 -前編-

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