『マイ・フェイス』創刊記念 一夜カギリのトークライブ Vol.2
『マイ・フェイス』創刊記念
一夜カギリのトークライブ(2010.5.10)
トークライブ・レポート
※ライブ全体の20%程度の抜粋記録です。
【Vol.2】
◆アルビノ・エンターテイナー、ここにあり!
粕谷: 僕はちょっと変わった思考というか、いろいろ考えてきた末に、人を幸せにしたいなあって。僕の名前、幸司(こうじ)っていうんですけど、幸せを司(つかさど)るって書く。
外川: ええ。
粕谷: 直接は恥ずかしくて聞けないんですけど、たぶん、アルビノの子が生まれて、親は何か思いをはせたんじゃないかな。幸せっていうのをイメージしてくれて、僕に名前をつけたのかなって。
外川: あの、アルビノの子供って生まれてみないとわからないですよね、アルビノだって。
粕谷: 超音波ではアルビノかどうかはわからないですから。
外川: 生まれてみてはじめて、アルビノだった。だから親御さんにしてみたら、ある日突然、真っ白な赤ちゃんが生まれて、すごくビックリ。情報がないっていうのは本人にとってもなんですけど、最初は、お父さんお母さんにとって深刻な問題なんですよね。だから、そういう方にも『マイ・フェイス』を読んでほしいなって思います。
下村: そのタイミングでこの雑誌を知ってもらうには、これからそうとう知名度をあげていかないとね。
外川: そうなんですよ。
下村: えぇっ !? て思ったときに、どうやったらそこにたどりつけるか。キーワードをもっと開拓していかないとね。
粕谷: そこで、粕谷幸司ですよ! 僕、アルビノ・エンターテイナーって言ってますけど、僕が前に出ていきたいんですよ。で、これから生まれてくるアルビノの子供たち、その親御さんたちが、「ああ、粕谷と一緒だな」って思ってくれれば、僕はそれでたくさんの人を幸せにできるかなっと。
下村: 幸せを司ってるねえ。NHKのカメラ(を指さして)、あそこ。
粕谷: どうぞ、子供番組なんかに、ぜひ!(笑)
◆4歳児に学ぶ
下村: これもそうだよなあって思ったのが、色が白いっていう第一印象が強すぎて、他の属性があんまり印象に残らない。白い人っていう印象しかない。それはやっぱりあるの?
粕谷: それはもう、たぶん明らかに。「白い」=「粕谷」だって思いますよね。遠くから見て白いのが粕谷だって。それこそ、完全に、白いから粕谷だって結びつける人が多いんじゃないですかね。
下村: 当事者の人たちの多くが、自分の抱えている「見た目問題」を枕詞にされてしまう、○○な人っていう。でも、非当事者側からすると、「他のところを見てって言われても、どうしても一番最初に印象として来るよ」みたいな。このギャップってありますよね。
外川: あります。どうしても目に飛び込んでくるものなので、最初にそこに目がいってしまうのは防ぎようがないですよね。
下村: 全盲のイラストレーターの友人がいるんですよ。中途失明だったんだけど、「失明してから、やっと人を見た目で判断しなくなった」って言うわけよ。本当にその人の人柄だけで接することができるようになったって。美人にも惑わされない(笑)。
粕谷: 見えてる限り、見えてるものが大きな情報源になりますよね。
下村: それが時には煙幕になっちゃうこともある。ニューヨーク特派員時代、4年くらいニューヨークにいたんだけど、息子が幼稚園に通ってて、友達にミゲル君っていう子がいたんですよ。何回か送り迎えに行ってるから、ミゲル君って聞いて、ああ、あの黒人の子だなあってわかった。それで、「ミゲル君って肌の黒い子?」って息子に聞いたら、彼は思い出せなかったの、「どうだったっけなあ」って言って。これにはすごい驚いた。たとえば僕が、誰かに「あなたが会った粕谷さんて、青いズボンの人?」って聞かれて、どうだったけなあっていうのと同じように。
息子はさっき言ったテーマでいうと、白い人っていう第一印象を飛び越えてたんですよ。それを識別の指標にしてなかったわけ。最初から他のことでミゲル君の属性を判断してるの。
外川: それね、ちょっとだけわかります。たぶん、世の中で、自分が当事者じゃないのに、一番当事者の人たちに会ってるのは、医者は別として、私だと思うんですよね。とくにいろんなタイプの人に会ってるのは、私が一番多いと思うんです。そうすると、白い人っていっても、もう何人もアルビノの方に会っちゃってますから、当然、そういう識別はないですね。
下村: 私が証明なのって。
外川: そうですね。アザの方も、脱毛の方もそうです。たくさんお会いしてるので、アザの××さんはあり得ないですね、もう。
下村: どんどん、みんなが表に出て、会える環境になればいいわけか。
外川: うーん、まあそうですねえ。
下村: それでね、さっきのミゲル君の話なんだけど、ショックだったのは、
外川: 下村さんはミゲル君を「黒い人」って認識してたってことですよね?
下村: そうなの。それ、本当にショックだったのよ。自分はそういうことでレッテルを貼ったりしない人間だと信じてたのに、簡単にレッテル貼ってたんだなって思って。4歳の息子に学びましたよ、そのときは。
粕谷: すごくいい話なんで、みなさん、この話を持ち帰ってブログに書くと思いますよ(笑)。
下村: ツイッターも(笑)。
下村: さて、今日のいろんな意見をふまえて、どうしますか、これから。
外川: 一時間半、話してきましたけど、結局3人とも意見があったりあわなかったり。会場の方の意見を聞いても、そうだなと思うこともあれば違うなって思うこともあるので、混沌としてぐちゃぐちゃっとしたまま、そのまま『マイ・フェイス』を伝えていこう。これが今日の答えです。スパッとひとつの道だけを真っ直ぐに進んでいくっていうよりも、右へ左へぐにゃぐにゃ曲がりながらも、ちょっとずつちょっとずつ、いつの間にか進んでるという、そういうふうにやっていきたいと思います。
下村: いいじゃん(拍手)。 そうなると、この雑誌を手に取ったときに、7ページは私の思いだ、とかさ。15ページに俺と同じ思いがある、とかね。
粕谷: ああ、ありますね。
下村: どこかにあればいいんでしょ?
外川: その通りですね。全部に共感してくださらなくても構わなくて、3ページはちょっと違うなって、そう思ってくれるところがあった方がいいかな。
下村: だから、カラーなんだ。
外川: えっ、なんで?
粕谷: いろいろな色がある。
下村: そう、これは白黒ではない。そんなこと言ったら次もカラー印刷だね(笑)。
外川: いや、カラーはお金かかるんですから(笑)。
下村: もしかしたら、第2号から白黒になっちゃうかもしれないけど、内容はカラフルですから(笑)。
外川: はい。上手にまとまったところで、ちょうど時間となりました。トークライブはこれでお開きとさせていただきます。今日はありがとうございました。
(拍手)