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第7回 【インタビュー】 日本アルビニズムネットワーク(JAN)

2010年1月5日

第7回 【インタビュー】 日本アルビニズムネットワーク(JAN)

08年10月5日のイベント「MFMSオープンミーティング」開催にむけて、参加
していただく団体や企業のみなさんをご紹介します。

今回は、「日本アルビニズムネットワーク(JAN)」です。
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アルビノとは、全身のメラニン色素を作れない、またはわずかしか作れない劣性
遺伝性の疾患である。医学的な診断名では「白皮症」とも呼ばれる。
日本アルビニズムネットワーク(JAN)は、アルビノ当事者および家族を支援
し、アルビノに対する社会的な理解を広げるため、今年発足したばかりの団体だ。
スタッフの矢吹康夫さんにお話を伺った。

●「アルビノ」とは
―まず、「アルビノ」という疾患にいてお聞きしたいのですが、どういう症状な
んでしょうか? 聞き慣れない名前なので・・・。
矢吹:症状に個人差はありますが、メラニン色素が作れないため、肌は色白で、
髪も白色、金色、茶色になります。それと、あまり知られてないことです
が、視力障害もあります。というか、アルビノ自体、あまり知られてない
と思いますけど(笑)
残念だが、JANのサイトはまだ出来上がっていない。そこで、海外の当事者団
体のサイトを紹介する。 ※左記インタビュー当時。日本アルビニズムネットワーク(JAN)

NOAH(The National Organization for Albinism and Hypopigmentation)
http://www.albinism.org/
また、昨年秋、国内初のアルビノの当事者団体「ドーナツの会」が発足。関西を
中心に活動を開始した。

ドーナツの会 http://park.geocities.jp/dounuts2007/
―ちょっと意外だったんですが、昨年まで、日本には、アルビノの患者会や当事
者団体はなかったんですね。
矢吹:アルビノは、「死なない、悪化しない、金がかからない」疾患なので、当
事者本人や家族が、あまり差し迫った問題にさらされないという事情があ
ります。さらに、視覚障害に起因する困難は、視覚障害者として制度的に
解決できてしまう部分もあります。そのため、何が何でも団体を設立しよ
うというほどの大きな動きはありませんでした。

様々な患者会の中には、医師主導型のものも少なくない。その場合、医師にとっ
て最大のメリットは、治療法や研究を進める上で必要不可欠な存在である患者と
大勢出会えるということだ。アルビノは根本的な治療法もないため医師にとって
もメリットが少なく、一応、専門医はいるものの、医師主導型の患者会も設立さ
れることはなかった。

●情報がない
―当事者団体がなくて、困ったことはありますか?
矢吹:とにかく、情報がない、ということです。僕自身、「アルビノ」という言
葉を知ったのは2000年のことです。自宅にインターネット環境が整っ
てからです。
―というと、ほんの数年前、大人になってからですね。それはまた、ずいぶんと
遅いというか・・。みなさん、そうなんですか?
矢吹:まあ、似たり寄ったりだと思います。僕の場合、『アルビノのページ』と
いうサイトで知りました。
アルビノについての情報や知識を「『アルビノのページ』で知った」というアル
ビノ当事者や家族は多い。このサイトは、アルビノのお子さんをもつ母親が立ち
上げたサイトだ。お子さんが生まれた当時、全くと言っていいほど情報がなく、
非常に苦労をされたとのこと。そこで、アルビノを正しく理解してもらうため、
そして自分と同じような人たちの役に立てばという思いでサイトを立ち上げた。
このサイトに励まされたという人は数知れず。医学的なことから日常生活まで、
網羅的に書かれているサイトだ。

アルビノのページ http://www5b.biglobe.ne.jp/~hiro53/

●誤った情報は氾濫?
矢吹:正確な情報は入手困難なんですが、反面、誤った情報はたくさん出回って
ます。
―たとえば?
矢吹:有名なところでは、「虚弱体質」「短命」「日光にあたると死んじゃう」
とか。
―それって、全部、まったくのデタラメなんですか?
矢吹:「色が白い」というだけで、いたって健康です。(メラニン色素が作れな
いため)紫外線の影響を受けやすいので日焼けしやすいということはあり
ますが、死にません。長時間外出するときでも、日焼け止めクリームをぬ
れば大丈夫です。
それから、アルビノの動物から連想するんでしょうけど、「アルビノは必
ず目が赤い」というのも間違いです。うすい灰色や青、茶色ですね。僕の
目の色は、緑がかった灰色です。
―たぶん、世の中の多くの、というかほとんどの人が間違った情報を信じてます
よね。
矢吹:「魔法つかえるんでしょ?」と聞かれたこともあります。これは極端すぎ
る例ですが。色が白いという外見に神秘性があり、視覚障害もあるためだ
と思いますけど、第六感が優れているとか、絶対音感があるとか、そんな
のは結構言われます。
―う~ん。もはや誤った情報とかいうレベルではないと思うんですが・・。それ
にしてもどうしてそんな情報がはびこっているんでしょう?
矢吹:おそらく、世界的に見ればハリウッド映画の影響が大きいでしょう。日本
ではマンガやアニメ、ゲームの影響が絶大です。
―アニメやゲーム、ですか。
矢吹:アルビノキャラは、結構昔から存在しています。古くは神話にも登場しま
す。でも爆発的にアルビノキャラが広まったのは、アニメ『新世紀エヴァ
ンゲリオン』からですね。
明確にはされていないが、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する綾波レイは、
多くのファンにアルビノとして認知されている。以後、類似したキャラクターが
激増した。
矢吹:いわゆるオタク文化圏における「アルビノ萌え」現象です。
―「アルビノ萌え」ですか。それは「アルビノが好きだ」という人たちですか?
矢吹:まあ、そうなんですけど、「アルビノ萌え」な人たちは、けっして現実の
アルビノ当事者が好きというわけではありません。あくまでもフィクショ
ンの、キャラクターとしてのアルビノが好きということです。
―なるほど。ということは、アルビノを正確に理解しているのではなく、むしろ
誤った情報(というか理想像としての設定)を共有しているということなんで
すね。複雑というか、深刻というか。「アルビノ萌え」という現象まであると
は、正直、驚きです。
矢吹:アルビノと思しきキャラは、たくさんあります。『機動戦艦ナデシコ』の
星野ルリ、『ローゼンメイデン』の水銀燈、『Fate/stay night』のイリ
ヤスフィール・フォン・アインツベルン。『イリヤの空、UFOの夏』の
伊里野加奈。それから・・
―あ、もうその辺で結構です。

●医師も知らない?
―正しい情報がない、ということでしたが、医者はどうなんですか? アルビノ
の子どもが生まれたとき、産院ではどういう説明をされるのでしょうか。
矢吹:産院の医師は、あまりアルビノのことを知らない人が多いですね。僕の両
親は「この子は10年は生きられない」と言われたそうです。
―えっ、ちゃんとした(という言い方も変ですが)医者にですか?
矢吹:はい、生まれたとき、産婦人科の医者から。他にも、「色が白い。あとは
医学書に書いてある通りです」とか「私も医学書でしか見たことがない」
と言われたなんて人も。笑い話のようですが、現実です。いろんなところ
を紹介されて「病院めぐり」をしたという話もよく聞きます。
―う~ん、・・・・・。

●親の不安
矢吹:情報がないというのは、「人生のモデルがいない」ということなんです。
この先、自分がどうなっていくのか、どんな困難があるのか、わからない。
自分の未来像が描けない。それは親にとっても不安なことです。オフ会や
セミナーに参加した親御さんからは「みなさんに会えて、安心しました」
という声をたくさん聞きます。
「成人した当事者の元気な姿を見ると、自分の子どもが成長した姿を見るようで
頼もしく思える」ということのようだ。子どもがこの先どんな困難に見舞われる
のかわからず不安であせっている時に、成人した当事者に会って、心底ホッとし
たというのは想像に難くない。まして、「虚弱体質」「短命」という情報にばか
り接していれば、嫌でも不安が募る。
―それは、アルビノだけではなく、病気のお子さんがいる親御さんに共通した思
いですよね。
矢吹:そうだと思います。とくに、「人生のモデルがいない」という症状の場合、
すごく不安です。
さっき、医者から「医学書に書いてる通り」と言われたお母さんの話をし
ましたが、けっして医学書に書いてあることだけを知りたいわけじゃない
んです。医学書にはへこむことばかり書いてありますし。
ためしに、手元にある医学書をひいてみる。
南山道『医学大事典』によれば、「白児症」の項目に、「先天的な異常」「眼、
毛髪、皮膚の色素が減少まはた消失」「眼振、羞明、視力低下、日光照射に伴う
紅斑を示す」「常染色体劣性遺伝」・・・とある。(本書には「アルビノ」も
「白皮症」もなく、該当するのは「白児症」のみのようである。なお「白児症」
という言い方は、私はこれまで聞いたことがない。)
『メルクマニュアル家庭版』によれば、「白皮症」の項目に、「まれな遺伝病」
「わずか数分間直射日光にあたっただけでひどい日焼けを起こす」「皮膚癌にか
かりやすい」「治療法はありません」・・・とある。
情報が限られている上に、これでは不安になるのもわかる。
―実際、当事者や親は、どういう情報が欲しいのですか?
矢吹:医療情報ももちろんですが、それよりも、これから成長するにつれて、ど
ういう困難があるのか、ということです。たとえば、学校でいじめられた
りしないか、授業に支障はないのか、就職はできるのか。
―なるほど。まさに、当事者でなければわからないこと、ですね。
矢吹:そこで、JANでは、医学情報や利用できる福祉制度の情報も基本的なこ
とは押さえますが、当事者同士の交流や体験談(日常生活で困ること、そ
の対処法)の紹介などに力を入れたいと考えています。
そして、将来的には、訴訟や行政への訴えかけなど、個人ではどうにもで
きないことを組織で対応することも視野に入れています。
先日、JANの「説明会&意見交換会」に出席させてもらった。そこでは、今後
の方針について当事者本人、家族、専門家が意見を出し合い、団体のサイトを作
るにあたり、どのようなコンテンツを盛り込んでいくのか等、かなり具体的な話
が出ていた。サイト完成が実に楽しみだ。

●知恵を拝借
―みなさんにメッセージをお願いします。
矢吹:アルビノの「問題」は、特徴的でありながら、なかなか理解しにくく、多
くが制度的に解決できる類のものでもなく、個人的な努力で解決できたり
できなかったりします。そうなると「社会的に解決すべき問題」として認
めてもらいにくく、私たち自身もどのように説明し、主張していけばいい
のか試行錯誤してます。皆さまのお知恵を拝借したいです。よろしくお願
いします。
JANは発足したばかりで、メンバーも20代が中心。若さ、勢い、柔軟性をも
ち、なおかつ、冷静で、客観的で、専門的な視点も兼ね備えている。今後の活躍
を期待したい。

→第8回 【インタビュー】 ㈱アヘッド ラボラトリーズ

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